個人的に弓道の技術論は、流派や先生によって違っていて良いと思っていて、自分は師範に教わった射が好きで、 自分にも弓にも合っていると感じています。なのでベースは師範から教わった技術があって、そこにいろいろと教えてもらったことを足している感じです。
今回は珍しく技術論ですが、こうしなくてはいけないというものでもないし、私は師範に教わって、それを目指している、という話です。
丹田を使うとは
弓道で丹田を使いなさい、といわれる事がありますが、その使い方を教わった話と、また、たまたまそれを視覚的にわかる動画があったので、記事にしようと思いました。
自分がやりたい、やらないといけないと思っていて出来ていないことなので、ダイエットの宣言みたく、 あえてこれを公開することで、出来ていない自分への目標設定ですね。
丹田を使えた離れを教えてもらった出来事
五段くらいの頃から 、師範には縦線、丹田を厳しく言われるようになりました。
そんな頃に師範に丹田を使った射を教わった出来事がありました。
師範はよく、帯をもって、丹田を押して、そこに力を入れるよう指導をされました。
あるとき、いつものように帯を持って丹田を押さえもらい、さらに丹田をぐっと押されて、
「もっともっと、限界まで攻めろ」と言われるままに丹田を攻め続け、
「横線をのばして、うなじを伸ばして、背板を上に突き上げて、肩甲骨をどこまでも伸ばして、肘を背板に持ってくるんだ」といわれました。
ぐんぐん先生に丹田を押されるのに必死に抵抗して力をいれ続けて、ああ、もうだめだ!と思って離れた射は、
とても軽やかな弦音がし、
矢はあっというまに的に到達し、
全身の筋肉は緊張から一気に解き放たれた開放感があり
背中に少し攻め合いの結果の心地よい痛みが残り
息はギリギリで、残心はすぐには動けず弓倒しができず、息を整えないといけない状態でした。
少し放心状態になっていました。
その時、師範は、嬉しそうに、
「どうだ、気持ちいいだろう?」
と言われ、
自然に「はい」と答えていました。
ああ、これが活きた離れなのだ
と感じた瞬間でした。
以来、その離れに魅了され続けています。その離れをまた出したいから、弓を引き続けています。
そんなに簡単には出来ないのですが…。
丹田の働きが視覚的にわかる動画
師範の指導内容を動画に撮るようになったのは、亡くなる2年前からだったのですが、もっと前から撮っておけば良かったと後悔しています。
そんな動画の中に、師範に指導を受けて、丹田の働きが視覚的にわかる動画が撮れていました。
師範はもう90歳前だったので、丹田の指導には、棒を使っておられました。
棒を使って丹田の位置にあて、丹田を使っているか確認しています。
力が抜けていると「もっと攻めろ」、途中で力が抜けたりすると「抜くなぁ」と怒られます。
実際の動画がこちら
約10秒の会の後、離れます。離れ後、編集でもう一度アップしてあります。
師範の手元にご注目ください。
【弓道】丹田の働きが視覚的にわかる動画
離れの瞬間に手元が動いてるのがわかるでしょうか。
丹田を攻めた分、師範の手が動いています。
丹田を押し切って、それをきっかけに離れが出せた射です。
この、棒の角度も重要で、この角度が私の丹田の攻める方向です。
この画角で撮れているのが、このシーンだけで、この前後にできていない射があって、それは棒は動かないのですが、角度が違って師範の手元が映っていませんでした。
師範は丹田については頷いていますが、私が物見を戻してからは、丹田について良かったということもなく、普通に手の内についての指導がありました。めったに褒めない師範なので、まあ、あるあるです。
そうは言ってもなかなかできない
前半に書いた活きた離れを実感した射は、体感的にはこれよりもっと良かったと思います。十年以上前で動画は残っていませんが…。
また、師範の丹田を押す誘導無しで出すのは、もっと大変と感じています。
押し返すから離れが出しやすい、というのもあります。
普段は、手先だけや、横線の伸びだけで離してしまうことが多く、ここまで攻めて離せていません。
試合でもいつもできていません。
審査では、これができた時に受かっている気がします。
採点制も、これができた方が点数がいいと感じています。
でも、なかなかできません。
道具と射の相性
師範からこの離れ、そしてにべ弓の使い方を教えてもらって思うのが、この離れと、にべ弓、麻弦との相性です。
これができたとき、弓は答えてくれます。
いえ、これができた時“だけ”答えてくれるのかもしれません。
新素材の弓、合成の弓、合成の弦では、ここまでの射が出なくても、ある程度矢勢、弦音が出てくれます。
にべ弓は、これをしないと、矢勢、弦音が出ない印象です。その代わり、しっかりできれば、新素材の弓や合成の弓よりも迫力のある矢勢、弦音が出ると思っています。
この辺りも、自分がにべ弓にこだわっている理由です。
普段できていない自分への戒め、今後の目標のために
結局自分が手先で離してしまうことが多いので、丹田から離れる射をもっとできるようになりたいので、この記事を書いてみました。
技術的な事の記載は賛否両論あると思います。これを強制するものでも決して無いです。
自分の教わったこれを突き詰めたい、という思いです。
今後も師範のいう「まともな射」(師範はよくこの表現を使われていました)を目指して研鑽しようと思います。