竹弓の矯正
竹弓を使っていると、弓の形が悪くなって矯正したくなることがあります。
下を押したり、上を押したり、胴を入れたり、といろいろあると思います。
また、入木を直す、出木を直す、ということ、も多いと思います。
そんな時に、形を調整するのが矯正器です。
こういうのですね。
ちなみに、入木は本弭をもって弦を上にして弓をみて、弦が真ん中より右側にある状態で、弓は少し入木になっているのが良いです。
出木の弓はそのままでは基本的にはダメで、矯正が必要です。
出木のにべ弓を使うことに
私は、にべ弓を使っていて、結構くせの強い弓も使っていて、矯正が必要な弓もあります。
私は、師範からにべ弓をお借りして、感動して、そこからにべ弓を使うようになっているのですが、師範以外のルートで、とても出木になっているにべ弓を頂く機会がありました。もう、出木がひどくて使えない、というのがその理由でした。
その弓を何本か引かせていただいて、確かに出木なんで角見をかなりかけないとうまく飛ばないのですが、なんというか、にべ弓独特の粘りのある返りというか、冴えがある感じがして、他の合成の弓にはない鋭さを感じていました。
自由に使っていいということだったので、思い切って、矯正することにしました。少し昔の話なのであまり写真はありません。
その弓は、とても下が狭かったので、下をしっかり押して、良い形にしてあげると、それだけでも少し出木もましになりました。
上下の張りを適正にしてあげると、本来の弓の形に戻っていく、と感じました。
それでもかなり出木なので、なんとか戻したいと思っていました。
今なら、電熱器も買っていて、ある程度踏んで直すこともできるようになりましたが、当時は、布でこすって熱をかけて矯正器をかけて直すのが精一杯でした。
なんとか出木弓を矯正したい
それで、普通に市販の矯正器をかけて、さらに、持ち運びできる弓座を挟んで、より矯正がかかるように工夫しました。
ただ、これだと不安定なので、思い切って、一体化して作れないかと考えました。
それで、この状態くらいに矯正がかかるように、型をとってつくることにしました(2016年の作業です)。
矯正器を自作する
家に板は一杯あったので、せっかくなので、予備の矯正器もつくろうと、沢山型をとりました。
もし、矯正器を自作を考えている方に助言ですが、集成材はやめておいた方が良いです。途中で割れますので…
右端の変わった型が、今回のより矯正がかかる設定の矯正器です。
他にとれるところで型をとりましたが、一番手前の型は、矯正器に対して垂直に木目が入り、簡単に折れる構造になってしまったので、使えませんでした。左側のは普通に使えました。小さい方の矯正器も自作しました。
この頃、糸のこ盤を持っていなかったので、ジグソーで切りだしています。ジグソーで切り抜くのは結構大変です。
左の二つはボツにしました。右から二つ目の変な形のが、矯正を強くかけれるように考えたものです。
切り出したあと、サンダーをかけます。細かいところは紙やすりです。
矯正が効かない… ハガキで埋める
矯正器を作って気付いたのが、弓があたる場所の溝の深さと角度が重要です。
ジグソー作業が下手なせいもあるのですが、大きく切りすぎて、弓の厚みよりもかなり口が広くなってしまい、矯正があまり効かない状況になりました。
思案した結果、もう一度1から切り出すのは、大変(ジクソーだと)なので、握りのアンコをつくるような感じで、ハガキで埋めました。
実際に矯正をかける 矯正を続けて最終的には直る
この弓が出木が強い弓だったのですが、当時の写真が残っていました(矯正器をかける前のがないですが…)
全体をみると握りから下の部分の出木がとくに強く、そこを特に戻したかったので、そこに矯正器をかけています。
また、カウンターになるように末弭側に、小さい矯正器をかけています(この末弭側の出木向きの矯正はほとんどかからないようにしています(それこそ弓に当たる部分の厚みが広くて矯正力が弱い))。
こんな感じで工夫しながら矯正していました。
試行錯誤でしたが、結果的にはこの弓の矯正はうまく行き、最近では張ったすぐでも出木まではいかず真ん中くらいで、普通の矯正器を入木になるようにかけるくらいで済むようになりました。落ち着くまでは、2年くらいかかっていると思います。
矯正器の小型化にとりくむ
さて、この矯正器ですが、かさばります。
また、弓に当たる部分が、ハガキで補修しているので、作り直したいと思っていました。集成材製というのも気になっていました。
なので、新しく作り直すことにしました。
型を書いて、弓と弦に当たる部分を基準に、できるだけ小さく取れるように描いてみました。
これを、ジグソーで切り出します。
集成材ではなく、1枚ものの板から作っています。
大きさはだいぶ小さくなりました。
でも、これでも矯正力はかなり強いです。
かけ袋にも入れやすくなるので、かなり持ち運びも楽になりました。
かなり重宝しています。
右から小型版の強い矯正器、2番目が、最初に作った強い矯正器。次のは、標準として使えるのですが、少し別の用途で反対側から弦を通して引っかける場所を作っています。一番左は市販品です。
ここからの写真は小型版の強い矯正器の2代目です(一代目は結局割れていまい、2代目は栂(つが)で作りました)
これは、糸のこ盤で作ったので、きれいに切り出せています。
弦があたる溝を最初、矯正器に対して垂直に掘ったのですが、上の方や下の方で使うときは斜めの方が良いので、斜めにも溝を掘っています。
実際に矯正をかけた写真
しっかり入木に矯正ができています。
今使っているこの弓は入木がとても強いので、逆にかけると強い入木を矯正できます。(合成接着剤の弓なので、普通の矯正器だとあまり変化しないので、これくらい矯正をかけてちょうど良い感じです)
その後、丸のこ盤を買って、別の形の矯正器なども作ったりしました。
以上、弓の矯正器を自作した話でした。
ちょっと、矯正力が強いので、一般的ではないかもしれません。
参考程度にしていただければ幸いです。