学生のころ、一般の先生に、道場に着いたら、他の準備よりまず先に弓を張りなさい、と習いました。他の準備より先に自分の弓を張っても失礼ではないと、むしろその方が正しい、と教わりました。
当時はよく分かっていなかったのですが、にべ弓を使うようになって、その話は至極当然なことなのだと理解できました。にべ弓は、張って、形を整えて、30分くらいしてからでないと形が安定せず使えません。なので、道場についたらまず弓を張って、それから他の準備をして、そして引き始めるのが調度良い、ということになります。
昔からくせの強い弓も使ってきたので、私は、30分前でも不安で、最低1時間以上、できれば、半日以上張ってから引きたいと思っています。なので、夕方の練習用にお昼に張っておくことも良くあります。最近は、道場に着いたら張る、ではなく、もう家から張って持っていっています。試合や講習会の時もそうしています。ちなみに、麻弦は何もしていないときに突然切れることがあるので、張った状態で移動する時は必ず合成弦を一緒に張って2本の弦をかけています。
調整が多めに必要な弓だと、一回弦を外すと、その時点でまた元の悪い形に戻ってしまいます。よく試合や講習会で、合間に弦を外して弦輪までほどいて調整をしている人がいますが、私は、弓の形が変わるので、それはしません、というかできません。もしするとすれば、弓の反りを戻さないように、弦を何回か捻って把の高さを変えるくらいです。弦切れは仕方ありませんが、弦切れ後も張って時間が経ってから再開します(試合、審査の最中はやむを得ずそのまま引きますが)。
ということで、道場に着いたらまず弓を張る、というのはにべ弓を使っている場合は、必要なことだと思います。合成接着剤の竹弓の場合もその方が望ましいと思います。全体がカーボンやグラスファイバーでできている合成素材の弓の場合は、その必要はないと思いますが、弓道をする上で、まず道場についたら弓から張る、という流れは、知っておいて頂ければと思います。逆に、竹弓を使っている人に対して、あの人は準備もしないで自分の弓を先に張っている、という誤解をしないようお願いします。
コメントを残す