例年だとこの時期は京都大会に行って、範士の先生の射を見たり、弓具店を見たり、弓友と友好を深めたりしている時期ですが、今年は、stayhomeなので、自分の弓と向き合う時間になっていますね。今回はにべ弓の調整のことを書こうと思います。
笄を起こした弓
2018年ににべ弓が笄を起こしました。
大事な試合の直前の時期で苦労しました。
2018年に笄を起こした弓が、2019年の春に戻ってきたのですが、弓師の先生から、秋まで寝かすように言われたので、2019年の試合には使いませんでした。
弓の調整は、得てして指導を受けたより、さらにちょっと遅めに調整する方が安定する印象です。昔、師範に、いついつまであまり使わないように、といわれたら、それより少しゆっくり調整していました。弓の調整は焦らないのが一番かなと思っています。
修理からあがった弓の調整 春に戻るが調整は秋からの予定
実際2018年に笄を起こした弓が2019の春に戻り、2019年の春夏は、成り(形)が全然落ち着かず、ちょっと引くのは無理でした。
これは、2019年6月頃の張り顔と裏反りです。
この時弦を外してから、思うような形になりませんでした。
弝の高さは14cmくらいで、裏反りは18cmくらいでした。
裏反り考えると、そんなに外すのが早かったとも思えませんが、ここで、弦を外した後、しばらく思うような成りになりませんでした。ある程度弓具店で張りこまれてから来た弓で、しかも、しばらく張ったままにしていたので、後でこんなに苦労するとは思っていませんでした。
外した後、形が落ち着かず苦労する
その後、思うような成りになるまで年末までかかりました。
調整したい場所が3カ所あって、それを全部満たすのがなかなか苦労しました。姫反りの入木が強いこと、弝が低いこと(上関板が開く)、胴が抜けやすいこと、それらをそれぞれ意識して順番に調整していきました。
最初は普通の矯正器で調整してましたが、結構張り込んで、また外して調整して、を繰り返していましたが、らちが明かず、秋に熱をかけてかなり強めに矯正して少しましになりました。熱をかけて強く矯正をかけるのを、数週おきに3回くらいしたでしょうか、年末くらいに、ようやく、普通の矯正器で落ち着くくらいになりました。
6月の外すのがもう少し慎重だったら、と悔やまれました。
結構張り込む時間が長かったですが、裏反りは15cm前後で維持できていました。
年末に成りが落ち着いたので引き始める。にべ弓と体が合っていく感覚
年末から、矢尺未満、重い巻藁矢で少しずつき始めました。練習が週1回程度なので、そこでこの弓の調整もし始めました。
年明けくらいから矢尺一杯引いて、重い的矢で調整していました。
だいぶ、引けるようになって、弦音もするようになってきました。
2月になってからは、弓の調整というよりも、弓と自分の体を合わせていくような調整の感覚でした。
弓が体になじんでくる、そんな感覚があるのがにべ弓独特の感覚です(あくまで私見)。
重い矢の方が安定しますが、だいぶ弓も安定してきたので、本来の重さの矢で引くと…。
かなり良い感じの弦音がしました。ただ、矢も離れも暴れます。今の段階では重い矢の方が弓に合っているな、と思いました。
これを軽い矢で安定して良い射が出せるようになってくると、矢飛びも弦音もかなり良いのが出るようになりそうです。
まだ、弝が低めで入木気味ですが、弦音もするようになったので、実用に耐えるようになってきました。
まだ、型調整のため合成の弦ですが、これを麻弦にするとさらに良い弦音がしそうです。
社会人弓道家なので、一気に矢数をかけることはないので、弓には無理はかからない予定です。むしろもっと練習しないと、と思う今日この頃です。
昨秋から、一時合成の竹弓を使っていましたが、やはりにべ弓の引き心地は違います。今年は何とかこの弓で調整ができそうです。
実際の成りの方はというと
最近は、外して張ってもあまり変な形にならずに張れるようになり、ようやく形が落ち着いたかな、という感じです。
やっぱり、落ち着くまで1年くらいかかりますね。まあ私の調整が下手なのでそれくらいかかったのかもしれません。あともう1年くらいしっかり調整すれば、その弓の形が出来上がっていく気がします。
これが、今の形です。
弝が13.5cmです。一般的よりかなり低めと思います。
これでも、上関板はこれくらい空いています。
でも、現状はこれでも弦音がしています。冴えが鋭い弓なので、これでも顔や手を打ったりはしませんが、これ以上低くなると、手や顔を払います。弝が低いとひっくりかえる危険も増しますが、今のところそれはありません。ただ、入木が十分に調整できていなかったら危険だったと思います。
まだ、上の入木が強いですが、昨年よりは全然みていられます(昨年は姫反りあたりが張ったすぐにとんでもなく入木になっていた)。写真は調整後です。
裏反りは15cm、個人的にはもう少しある方が好きですが。
弓弝の高さや裏反りは、定規ではなく自分の手で測る
ちなみに、自分はあまり何cmと定規で測る方ではなくて、肥の高さは「拳の親指を立てた状態(爪の真ん中で14cmくらい)」、裏反りは自分の手のひらの長さ(約18cm)、がお気に入りです(裏反りの写真は今回調整の弓ではありません)。
にべ弓は、形が落ち着かなくても。しっかり面倒見ていれば、後でも形が矯正していける部分はあると思います。
矯正器の記事(【弓道】竹弓の矯正器の自作と出木の弓を調整した話)の時に書いたように、他の方が使っていた弓を、自分の射に合わせて2年くらいかけて矯正したこともあるので、諦めずにしっかり面倒をみるのが大事と思います。
過去には、新弓からにべ弓を調整したことがあるのですが、それは、ほとんど乱れることなく、苦労せずおさまっていきました。弓によっていろいろです。
弓の調整は気長な感じですが、社会人弓道ならではの弓の醍醐味かなと思います。いろいろ教えてくれた師範に感謝です。
私自身は、本で読んだりするより師範に教わった耳学問が中心で、さらに自分の工夫も入っているので、正式な方法ではなく、間違っているところもあるかと思います。あくまで一例として参考にしていただければ幸いです。
コメント失礼いたします。
竹弓のことを扱うウェブサイトは多くないため、興味深く記事を読ませていただきました。
ところで、裏ぞりを測る位置ですが、写真を見ると、籐頭ではないのですが、何か理由があるのでしょうか。
全弓連の昔製作された弓具に関するビデオでは、籐頭で15センチ以上と説明されており、都城の弓師さんの作られている弓の扱いにも、裏ぞりは籐頭で測るように記述されていました。
私は普段、人吉の弓師さんのニベ弓を引いていますが、やはりそのようにしています。
正直、いずれで計測しても、数センチしか変わらないため誤差の範囲とも言えそうです。ただ、写真のようにもっとも出っ張っているところで15cmとなると、籐頭で測ると12、13cmくらいになるため、少し抜けすぎな気もしてしまいます。
自分の知らないことがあるのかと思い質問させていただきました。
よろしくお願いいたします。
コメントありがとうございます。私の方式は完全に我流です。弓さんの方が正しいと思います。
感覚としては、弓の外した状態の形は弓によってかなり違うので、私は最大を測った方がその弓の今の状態をより表していると感じます。藤頭で15cmは、最大の裏反りは弓によってかなり違ってくると思います。また最大の位置は弓によって違ってきますし、同じ弓でも位置は変化すると思います。張りにくさは最大が深い方がより張りにくいと思います。御指摘のように最大で15cmだと感覚的には抜けすぎだと思います。ただ、以前最大で18cmの状態で弓具店に見せたとき、深すぎるといわれたことがあります。この辺は、好みなので(裏反りが深い状態が好みというのはかなり特殊だと思いますが、私は弓の冴を楽しみたいので深い方が好きです)弓具店さん的には壊れそうで嫌なんだと思います。御指摘いただきありがとうございました。
お返事いただきありがとうございます。
確かに、成り、特に目付あたりの胴の深さの違いなどによって、握り部分では同じ弓でも、最大の裏ぞりは変わってきそうですね。
勉強になりました。
ありがとうございました。