【弓道】肩関節の痛みの原因と痛くない引き方について(肩甲下筋が原因の場合)

肩の痛みは続く…

昨年後半から右肩が痛くなって、思うように練習ができていません。
 
プーリーの可動域訓練もあまり奏功しませんでした。
 
整形外科に通院して、肩峰下滑液包注射をして頂きましたが、あまり効果なく、その後、肩関節関節腔内注射の方が効果があり、関節唇損傷も疑われたので、MRI検査もしてみました。
 

MRI検査では関節唇損傷

MRI検査では、前方関節唇に損傷があるという結果でした。
 
     
 
赤丸の部分の関節唇の変形が見られるという所見でした。
 
関節唇損傷は、野球やテニス、バレーボールなど、手を頭の上方に挙げて下すスポーツに多いようです。
2021年 に、俊足で知られるソフトバンクの周東佑京選手が手術されています。
引退された元日本ハムの斎藤佑樹選手も関節唇損傷で苦労されていたそうです。

肩の関節が硬い?内旋制限がありました。

改めて診察していただいて、「〇〇さん、肩の関節、硬いですか?」と聞かれて、あまり意識していなかったのですが、診察いただくと、右肩の内旋(ないせん)制限がありました。
 
写真でみると、右の前腕が真っすぐ下に垂れないのです。
 
 
肩関節の世界でいう2ndポジションという位置(上腕を体と平行に水平にする)で内旋(前腕を下に下げる)が、制限されています。
 
写真でみると、左肩は前腕が壁にくっつけることができ、内旋制限がありません
右肩は、前腕が壁につけることができず、内旋制限があるということになります。 痛みを我慢すれば、壁につけることはできないことはありませんが、 痛みがでます。

理学療法士の先生の診察

この肩関節の可動域制限が、原因なのか、痛めたための結果なのか、関節唇損傷が原因なのか、などを含めて、理学療法士の先生に診察してもらいました。
 
私の肩関節の痛みが強いのは、特に関節の前方で、肩関節の水平外転(上腕を体と平行に、腕を水平にして、上腕を後方に引く)、と肩関節の外旋の時に特に痛みが出ることがわかりました。(内旋制限もあるのですが、外旋しても痛みが出ていました)
 
肩関節の水平外転
 
肩関節の外旋
 
この結果からわかることは、肩甲下筋の付着部の痛み、とのことです。肩甲下筋部の肩板の痛み(肩板の前方成分の痛み)ということになります。
 
関節唇自体の痛みがどの程度来ているかわかりませんが、関節唇損傷の痛みのテストをいくつかしてみると、陽性のものと陰性のものが、あり、関節唇損傷が直接痛みの原因になっているかははっきりとわかりませんでした。肩の痛みは複合的で、原因がひとつでないことも多いようです。
 
理学療法士の先生の診断では、関節が固いわけではなく、痛みで可動域制限がでている、とのことで、関節を柔らかくする、というリハビリは不要で、やはり痛みをとることが重要のようです。
 
当初、関節唇損傷と聞いたときは、かなり落ち込んでいたのですが(関節唇の損傷は自然治癒しないため)、肩板の痛みということであれば、リハビリ次第では治る可能性がありそうで少し安心しました。
 

肩関節の痛みに関するテスト

肩関節の関節唇損傷の痛みのテストですが、いくつかあります。
参考図書:肩関節理学療法マネジメント
 

関節唇の損傷を見るテスト

テストはいろいろあるようです。
 

オブライエンテスト(O’Brien test)
肘を伸展させたままで肩関節90屈曲,やや水平内転させる。母指を下に向けた前腕最大回内位で、上方に腕を挙上する方向に(実際には診察者が抵抗を加える)力を入れる(自分でするなら机などにあてて腕をあげようとしてみる)、次に手掌を上に向けた前腕回外位で同様の手技を行う。拇指を下に向けたときに痛みが誘発され手掌を上に向けた際に消失または軽減すれば陽性とする。

 

写真は一人でしていますが、実際には検者に抵抗を加えてもらう必要があります。
私の場合は、どちらでも痛いので陰性です。

90度外転位最大外旋テスト
 肩関節を他動的に90度外転位とし,最大外旋させた際に肩関節の上方もしくは上後方に痛みが誘発される場合を陽性とする.
 

これも参考文献をみればわかりますが、厳密には検者がいて行うテストです。

→私は、上方に痛みがでますので陽性と思います。前方もやや痛いですが…。

参考文献によると、「90度外転位最大外旋テストとO’Brien test のいずれかが陽性であったもので有効性をみると敏感度,特異度,有効度のすべてが80%をこえていた」とありました。

一応後者が陽性なので、陽性で良いのかなと思います。MRIでも損傷があるので…。
でも、やはり肩の痛みは複合的な感じがしますね。

Speed test
肘関節を伸展し,前腕を回外させた状態で前方に挙上させ,これに検者が抵抗を加えた際に肩関節前方に痛み
が誘発される場合を陽性とする.


こちらも、本来は「検者が抵抗を加えた際」の痛みなので、なにか机などで抵抗をかけて評価すると良いと思います。
私は、これも陽性なんですが、関節唇の損傷として紹介されていますが、上腕二頭筋腱の損傷でも痛くなるらしいので、私の場合、関節唇由来の痛みかは、よくわかりません。

 
水平内転テスト
上の参考文献になかった、「肩関節理学療法マネジメント」の書籍の方にあった関節唇のテストです。
肩関節90度挙上、肘関節伸展位で上腕内旋前腕回内位と上院外旋前腕回外位で他動的に水平内転する。前腕回内位(親指下)で肩関節前上方にクリックまたは疼痛が誘発され、前腕回外位(親指上)で症状が誘発されない場合が陽性である。上腕内旋位では水平内転により上腕二頭筋が牽引されるため、上方関節唇損傷があると疼痛が誘発される。
 
写真では腕の挙上が90度よりちょっと低いですね。すみません。
 
→私は、これは陽性です。親指上は痛くないです。
 
 

肩甲下筋の断裂のテスト

肩甲下筋は肩甲骨の内面から上腕骨前面についている肩関節を内旋させる筋肉です。
この腕の位置から、前腕をお腹側に回してくる動きが内旋です。
弓道で会の状態でいえば、妻手を前に寝かす方向の動きです。
 
肩甲下筋が断裂していると、以下のテストが陽性になります。
 
lift off test
背中に手を回し、その手を背中から離して保持できるか確認する。
 
 
私は断裂はしていなさそうなので、この検査は陽性になりません。
 

肩甲下筋の伸張時の痛み

肩甲下筋が伸張する姿勢は、こちらの文献によると
バイオメカニクスに基づいた肩関節障害の評価と治療
理学療法の歩み 25(1): 3-10, 2014.
 
肩甲下筋 
 上部線維)
  挙上 0°位外旋
 中部線維)
  挙上 30°位外旋
 下部線維)
  挙上 60°位外旋,水平外転位外旋
の肢位になるようです。
 
 
 
それぞれの肢位で外旋(前腕を上げていく後ろに回す動き)させます。
結論から言うと、全部肩の前方が痛いです。
肩甲下筋が伸張するときに痛みがでているとわかります。
 

肩甲下筋が痛くなる位置の解説

モデルを使って説明します。
上腕を体に平行にして水平に上げた状態です。
 
 
これを、水平外転(妻手を肩より後ろに回す)すると、肩甲下筋の付着部が伸ばされて痛みがでます。
 
 
さらに外旋(いわゆる妻手を起こす)すると、さらに肩甲下筋の付着部が伸ばされていたくなります。
 
 
上方から見ると
 
 
後方から見ると
 
 
 
ということで、妻手を後ろに引く、妻手を起こす動作で肩前方の痛みがでるようです。

肩を痛めた理由を考察

私はもともと、平付け(妻手が前方に寝る、内旋気味の状態)の傾向があり、よく講習会などで、妻手を起こすように言われていました。また、わたしは、妻手肘は、肩の線上、もしくは肩の線より少し後ろにくることを良しとしていました。これは流派にもよると思うので正解はありませんが、私は肘が肩より前にあるのを良しとしていなかったのです。これが、妻手肘を起こすことと矛盾が生じます。妻手肘を起こしたうえで、肘を肩より強く後方に引いてしまって、肩甲下筋の付着部に負担がかかって、肩板を損傷したと考えます。
特にこの時に、上腕骨頭を前に出そうとする動きが強くなると、水平外転がより強くかかり腱に負担がかかることがわかります。
 
これが、弱い弓なら、あまり問題にならなかったと思うのですが、強い弓でかなり長い会を常時持つようにしていたので、損傷が蓄積したように思います。
よく、妻手肩が抜けている人に、妻手肩を突き出すように指導していましたが、それを強く言いすぎるのは良くないと反省しました。

損傷部位から痛くない引き方を考察

理学療法士の先生から勧められたのは、会の時に、上腕を水平外転しすぎないこと(肘を後ろにまわさない)、外旋しすぎないこと(妻手を起こしすぎない)、でした。
肩甲骨と上腕を一本にして、肩甲骨で離すようにしたら良いのでは、と提案頂きました。
なかなか弓道の真にせまるアドバイスでした。
 
 
これを実践してみると、なるほど、肩関節前方の痛みはあまり出ません。
意識としては、腕で離れるのではなく、肩甲骨から離れるイメージですね。より体全体を使った離れになる印象で、良い感じがします。
 
師範には、肩甲骨は、会の前半は水平に伸ばして、最後に左右の肩甲骨の下角を寄せていき、両肘を背板に向かって攻めていくように習いました。それの実践に近いように思いました。ただ、肘を背板に持っていく攻め方は、肩の水平外転の要素があるので、注意が必要です。背板よりやや下方、体の中に近い方を目指した方が、負担は少なそうです。
ちょっと、これを意識して今後引いてみようと思います。
 
ちなみに、大三や引き分けでは、また別の痛みがでます。
それは、たぶん肩甲下筋ではなく、関節唇損傷の痛みではないかと思っています。そちらは、痛くない引き分けを手探りで探している感じです。
 
あくまで、私の障害部位の場合のリハビリ、ということになりますので、肩関節の痛みのある方は、専門の整形外科、理学療法士の先生に診察をうけて、ご自身の症状にあったリハビリをお勧めします。
 
 まだリハビリの途中で、練習復帰はできていません。オフシーズンなので、焦りは禁物と思って、リハビリに専念しようと思います。
 
 私の、いままでの経験則から、痛みの一番の対処法は「痛いときに無理に練習しない」と思っています。
今回の痛みは結構しつこいので、しっかり痛みがとれれてから再開したいところです。
再開時に気をつける引き方のヒントももらえたので、焦らずじっくり行きたいと思います。
 
 
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3 件のコメント

  • 初めまして。
    興味深く拝見しました。
    似たような肩関節の症状で4カ月ほど弓を休んでいます。
    続報を期待しています。

    • ご覧頂きありがとうございます。まだ痛みで再開できていませんが、またブログで経過をご報告させて頂きます。

  • 放射線科医です。
    大変よく分析されていると思います。
    5枚目のMRIでは、関節唇損傷付近に、肩甲下筋挫傷を示唆するわずかな信号上昇があるように見えます。(テストに矛盾せず粗大な断裂は確認できませんが、損傷はあるかもしれません。)
    となると、やや特殊な関節運動なので、あまり経験はないのですが、引き手の水平外転及び外旋による肩甲下筋の関節唇への圧がかかった状態で、肩甲上腕関節の上腕骨頭の前方並進運動による損傷というのがあり得るメカニズムかもしれません。

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